スキップしてメイン コンテンツに移動

アメリカ 先住民部族カジノ ~地域社会に欠かせない基幹産業 The American Indian Gaming Model

クレアモント・グラデュエイト大学(米カリフォルニア州)の評議員会で、ミッション・インディアン系のサン・マヌエル族(San Manuel)元会長のデロン・マルケス(Deron Marquez)氏が、テンプル大学(東京)の現代アジア研究所主催の講演会に登壇。マルケス氏は、日本ではあまり知られていない、トライバルカジノ(アメリカンインディアン部族が運営するカジノ)について説明した。

デロン・マルケス(Deron Marquez)氏

講演タイトルは「Integrating The Casino Gaming Industry in Japan: The American Indian Gaming Model」で、日本で統合型リゾート(IR)の導入準備が進んでいること背景に企画されたもの。現在、IR誘致に前向きの北海道に対して、トライバルカジノ事業者であるモヒガン(米コネティカット州、モヒガン部族)、フォックスウッズ(米コネティカット州、マシャンタケット・ピクォート部族)、ハードロック(米フロリダ州、セミノール族)が参入意向を示している。

アメリカには326の先住民部族保留地があり、それぞれが一定の自治権をもつ部族政府を形成している。白人に土地を奪われ不毛の地に強制的に移住させられた部族にとってカジノは重要な産業で、アメリカにある約1000のカジノ施設の約半数が連邦政府の認定を受けた部族が所有運営するトライバルカジノだ。トライバルカジノではない、民間企業(ラスベガス・サンズ、MGM、シーザーズ等々)によるカジノはコマーシャル(商業)カジノと呼ばれる。両者は異なる法律によって規制されており、部族によるゲーミング施設はインディアン賭博規制法(IGRA)によってクラス1~3に区分されている。クラス3がいわゆるカジノ施設(トライバルカジノ)だ。2017年のアメリカのカジノのゲーミング収益はトライバルカジノが311億9600万ドル(約3兆3864億円)、コマーシャルカジノが417億5800万ドル(約4兆5332万円)だった。

IGRAは、部族のゲーミング事業の収益の使途を、「部族政府の運営やプログラム」「部族とその構成員の一般的な福祉」「部族の経済発展を促進」「慈善団体への寄付」「地方自治体機関の運営資金」と規定している。マルケス氏はアリゾナ・インディアン・ゲーミング協会を例に、カジノ(クラス3)のゲーミング収益の配分を説明。

アリゾナには20の先住民部族保留地に22の部族が住んでおり、24のカジノ施設がある。年間約5億3787万ドル(約570億円)のゲーミング収益(GGR)のうち15%が優先的に社会に還元される。まず、12%が社会保障や商業や経済発展の促進など地域社会に利益をもたらす政府サービスの財源として町・市・郡に直接収められ、残りの88%がアリゾナ・ベネフィット基金に収めらる。ここからゲーミング局の運営費(9%)、ギャンブリング障害の予防対策と回復支援費(2%)を差し引いた額が各分野への拠出の原資となる。ここから各分野への分配する割合が定められていて、56%(約38億円)が教育促進プログラムへ、28%(約19億円)が緊急救命センターに拠出され医療福祉の財源となる。このほか、野生生物と生息地の保護、観光振興、部族独自の文化や言語の保護などに拠出されている。





コメント

このブログの人気の投稿

メルコリゾーツ 2025年にスリランカでカジノ施設開業目指す

マカオで「シティ・オブ・ドリームズ」などのカジノを含む統合型リゾート(IR)を運営するMelco Resorts & Entertainment(以下、メルコ)は4月30日、スリランカのJohn Keells Holdings(以下、ジョン・キールズ)とのパートナーショップを発表した。ジョン・キールズはコロンボ証券市場に上場するスリランカ最大規模の複合企業グループで、メルコはジョン・キールズがコロンボ中心部で進めている10億米ドル(約1545億円)規模のIR開発プロジェクト「Cinnamon Life Integrated Resort」(2019年に部分開業)に参画する。メルコとのパートナーシップにより同IRのブランド名は「City of Dreams Sri Lanka」に変更され、客室数800室以上のホテル、リテール、飲食店、MICE、そしてカジノを含むリゾートになる。 メルコが全額出資した子会社は、すでにスリランカ政府から20年間のカジノライセンス付与されている。メルコは「City of Dreams Sri Lanka」のカジノフロアと、ホテルの最上階の113室を運営する。同社の発表によると、カジノへの初期投資額は約1億2500万米ドル(約193億円)。 ノンゲーミング施設の完成は最終段階にあり、2024年第3四半期(7月-9月)の完成予定。カジノ施設の開業は2025年の半ばを見込んでいる。 メルコの会長兼最高経営責任者であるローレンス・ホー氏は、「私たちはスリランカには計り知れない可能性があると信じており、この機会は私たちの既存の不動産ポートフォリオを補完するものです。City of Dreams Sri Lankaはスリランカの観光需要を刺激し、経済成長を促進する触媒として機能することが期待されています。 私たちはこの事業を確実に成功させるために、パートナー企業およびスリランカ政府と緊密に協力し続け、地元社会と経済に大きくプラスの影響を与えることを期待しています。」とコメントしている。 スリランカ最大の都市コロンボには、政府ライセンスのもとに営業している地元資本のカジノが4軒が営業している。このうち3軒の客層は明らかに外国人(主としてインド市場)が大多数を占め、「City of Dreams Sri Lanka」の開...

タイの「カジノを含む大型複合娯楽施設」はあっというまに開業するだろう。

多額のお金を消費してくれる外国人客の誘致により経済を活性化させるため、また、違法ギャンブルビジネスへの消費の流出を防ぐために、タイ王国は、カジノを含む大規模な複合娯楽施設(Entertainment Complexesと呼ばれている)を開設する法律的な準備(=カジノ合法化)を進めている。3月28日の下院では出席議員257人中253人が賛成票を投じ、この結果が内閣に送られた。そもそもタイ国王(ラーマ10世)が非常に前向きらしいので、カジノ合法化はほぼ確実とみられている。 日本のカジノ合法化議論の起点をどこと捉えるかは、いろんな見方があるだろうけど、個人的には、石原都知事の「お台場カジノ構想」発表(2002年)によって火が付いたと思っている。だとすると、IR推進法成立(2016年)まで14年もかかったことになる。IR実施法成立(2018年)から国内IR第1号の夢洲IRの開業予定時期(2030年)まで12年もかかる見込み。 こういった日本の状況を振り返り、「タイに実際にカジノを含む複合娯楽施設が開業するのはずっと先のことでしょ?」と思う人もいるかもしれない。しかし、日本の進みの遅さが異常なのであって、タイのカジノは、あっという間にできるだろう。3~4年もかからない。なんせ、タイのセター政権は、法律が成立したら「2年以内にオープンさせる」という目標を掲げているのだから。 そしてタイ労働省は、この複合施設(複数)開設による雇用創出を「少なくとも5万人」と見込んでいる。日本で構想されているIRよりも小型の施設が想定されているため、この雇用者数見込みから逆算すると合計施設数は6~8施設を念頭に置いているのだろう。 立地として目されているのは、国際空港から半径100km圏あるいは特定の観光地域、国境(入国検問所)の近く。地元メディアが例として挙げた地名は、南部ならPhuket(プーケット), Phangnga(パンガー), Krabi(クラビ), 北部ならChiang Mai(チェンマイ), Chiang Rai(チェンライ), Phayao(パヤオ)。 text Tsuyoshi Tanaka

ゲーミング・スタンダード協会 通信プロトコルに関するセミナー開催

アメリカに本拠を置く非営利法人インターナショナル・ゲーミング・スタンダーズ・アソシエーション( International Gaming Standards Association 、以下IGSA)は6月2日(太平洋標準時刻)、ゲーム管理システム(Game to System,以下G2S)についての ウェビナー (オンライン・カンファレンス)を開催。「G2Sシステムはどのようにゲーミング産業に価値をもたらしているか?」というテーマに沿い、ゲストスピーカーそれぞれの立場からG2Sのメリットを語った。 G2Sとは、EGM(電子ゲーム機)と自社システムの間で情報を交換するための、IGSA標準の通信プロトコル。ソフトウェアのダウンロード、リモート構成、リモートソフトウェア検証、ネイティブの組み込みプレーヤーユーザーインターフェイス(PUI)など、多くの高度な機能を可能にする。 ゲストスピーカーにゲーミング業界のスペシャリストとして、Paul Burns氏(Atlantic Lotteriesの戦略&マーケティング担当シニアマネジャー)、Erik Karmark氏(Western Canada Lottery CorporationのGaming and Operations担当バイスプレジデント)、Greg Bennett氏(Alberta Gaming Liquor & Cannabisの技術製品&コンプライアンス担当シニアマネジャー)を招へい。IGSAのMark Pace氏(ヨーロッパ担当マネージング・ディレクター)がモデレーターを務めた。   VLT(ビデオ・ロッテリー・ターミナル)とスロットマシンのシステムと機器の統合に携わってきた立場から、Greg Bennett氏は、「G2Sプロトコルはカジノ管理委員会に於いて認証許可を受けており、これを使用することで得られた最大のメリットはゲーム機器に情報をダウンロードできること」だと述べた。 「ゲームのダウンロード、OSのダウンロード、請求書アクセプターのダウンロード、カードリーダー、さらにはプリンター等々。非常に広い管轄地区内のすべての場所に、技術者が物理的に出かけてソフトウェアをアップグレードするとしたら数カ月はかかるであろう作業が、数時間でできる。これによりソフトウェアの更新をより...

マカオ 8月のカジノ収益は前年のわずか5%

マカオ特別行政区のゲーミング産業の規制機関、博彩監察協調局(DICJ)によると、8月のカジノ収益(GGR)は前年同月比94.5%減の1,330 million パタカ(約176億円)。 1月から7月の累計収益は36,394 millionパタカ(4,832億円)で前年同期の18%にとどまっている。  

和歌山IRプロジェクトにシーザーズが参加

和歌山マリーナシティにおける特定複合観光施設(統合型リゾート:IR)の設置運営事業者に選定されているクレアベストニームベンチャーズ株式会社(以下、CNV)及びClairvest Group Inc.のコンソーシアムにCaesars Entertainment(以下、シーザーズ)が参画する。 シーザーズは、米国を中心に80年以上にわたり50 施設以上のリゾート運営実績を誇るゲーミング及びリゾート産業で最も有名なブランドの一つ。日本でのIR運営に関心を示していたが2019年6月にエルドラド・リゾートによる買収に合意、既存事業への経営資源の集中を理由に同年8月に日本市場からの撤退を表明した。 CNVのエディー・ウー(Eddie Woo)代表取締役は9月29日の声明で、「CNVとシーザーズは、日本におけるIR 事業に対してビジョンを共有しており、海外からの訪問者を増やすことでCOVID-19 パンデミックからの経済復興を促進するだけでなく、和歌山県、関西地方、そして日本全体に大きな経済活性化をもたらす統合型リゾートを一緒に作ることができると確信しています」とコメント。 シーザーズのトム・リーグ(Thomas R. Reeg)CEOは「我々の経験がCNVの経験と完璧に調和すると信じています」とコメントした。 今年6月には、 CNVは 同コンソーシアムに、AMSEリゾーツジャパンとGroupe Partouche(グループ・パルトゥーシュ)が中心的なメンバーとして参加することを発表している。 (note)Eddie Woo氏(胡耀東、Yao Tung Woo)はTTLリゾーツの取締役として、本コンソーシアムに参画。アジア地域で大手のゲーミング会社で IPO 責任者としてゲーミング会社の上場、カジノ施設の買収や多数のカジノプロジェクトに携わった経験がある。 [和歌山IR 関連記事] ▼ 和歌山IR クレアベストが提携企業を発表 〔2021-06-08〕 ▼ 和歌山県IR クレアベスト提案は雇用創出1.4万人 〔2021-06-02〕 ▼ 和歌山県 統合型リゾート事業者公募 クレアベストを優先権者候補に決定 〔2021-06-02〕 ▼ サンシティが和歌山IRから撤退を公式表明 〔2021-05-13〕 ▼ 日本IR導入の現状 RFPプロセスにあるのは4自治体 〔20...