INTERVIEW
ブレンダン・バスマン Global Market Advisors パートナー
9月4日、政府は統合型リゾート(IR)に関する基本方針案を開示した。そこでは改めて、国際的なMICEビジネスが展開されることがIR開設の意義であると説明されている。では、ゲーミング産業としてのインパクトはどの程度のものなのか、GMAのブレンダン・バスマン氏に聞いた。〔文中敬称略〕
by Tsuyoshi Tanaka(Amusement Japan)
──日本型IRは、IR整備法にもIR基本方針にも明記されているように、MICEビジネスの振興を大きな狙いに据え、非常に大規模なMICE施設を作ることを要求しています。
バスマン MICE(Meeting、Incentive tour、Convention・Conference、Exhibitionの頭文字。主要なビジネストラベルの形態)はラスベガスやシンガポールなどのデスティネーション(旅行目的地)にとって、今も成長促進要素のひとつであり続けています。日本は2020年のオリンピックの後も観光産業の成長を促進するためにMICE振興を必要としていますので、どのIRの開発おいてもMICEビジネスは重要な役割を果たします。大阪、横浜や東京などの大都市には、MICEの大規模開発をサポートし、既存の施設を補完する手段があります。ただし、地方都市に作られるIRにとっては、IR整備法で規定されているような大規模なMICE要件はチャレンジングな課題です。MICEビジネスは全国のどんな場所でも、経済を活性化させるドライバーとなり得ますが、IR整備法で要求されているような大規模なMICEビジネスを軌道に乗せるまでにはかなりの時間を要するでしょう。
──それだけ重要な要素になるということは、MICEのノウハウや実績は、IR事業者選定にも影響するのでは?
バスマン もちろん、MICEビジネスを理解しているIR事業者は、MICE施設をメインのデスティネーションにおいていない事業者より優位な立場にあります。日本がアジアの次の主要なMICEデスティネーションとして浮上するので、IR事業者はMICEの専門知識を持ち、かつ日本市場にカスタマイズする必要があります。日本に参入するIR事業者は、過去の成功実績にとどまらず、新しいイベントを誘致すると同時に、MICEビジネスを次のレベルに引き上げ優れたサービスを提供しなければなりません。
──もしMICEによって海外からビジネスツーリストを誘客できなかったら、カジノもじゅうぶんな収益を上げることはできないでしょう。カジノ収益に関しては、地域の住民に大きな期待をすべきでないと思います。
バスマン 日本のゲーミング市場は、世界の主要なデスティネーションのいずれかに匹敵する世界最大規模の市場になる可能性を秘めています。Global Market Advisors(GMA)は2017年に日本に関する白書をリリースしましたが、日本全国に6つのIRができた場合のゲーミング収益予想は合計約250億ドル(約2兆7千億円)となり、その34%が海外からのツーリストによるものると予測しました。大阪と横浜の2カ所に大型のIRが作られた場合は合計125億ドル(約1兆3500億円)で、25%が海外からのツーリストによるもの。ゲーミング収益の規模はIRができる場所によっても規定されますが、大規模な施設はより大きな売上を上げます。これは商圏人口もツーリスト来街者数も地方都市よりも多いからです。
手軽なギャンブル・レジャーはカジノの影響を受けない
──つまり2年前の時点では、大阪と横浜の2カ所にIRが開業した場合、国内市場から約1兆円のゲーミング収益があると予測したのですね。それはパチンコ市場規模の約3分の1に相当します。
バスマン 我々の白書の後に成立したIR実施法では3つが上限となりましたし、予想していなかった日本居住者に6000円の入場料が課せられることになり、今では2年前の推計値は高めなものと言えます。ですが既存の公営ギャンブルやパチンコ産業の市場規模が示す通り、日本には巨大なゲーミング市場があるのです。IRのカジノには6000円の入場料が課されるために、IRの外側に位置する、既存のギャンブル市場の中の「手軽な遊び」の領域は依然として強固な市場であり続けるでしょう。地元の多くの人は、ちょっとした時間にギャンブルを遊ぶことを選んだとしても、6000円という入場料を払うことをためらうでしょう。重要なのは、カジノゲームとは、現在日本では提供されていない新しいエンターテインメントということです。いままでギャンブル・レジャーを遊んでいない日本居住者や、海外からやってくるツーリストの両方を惹きつけるのです。
──日本IRのギャンブル依存症対策についてはどうお考えですか?
バスマン 日本でも議論されているとおり、レスポンシブルギャンブリングは、IR開発において重要なものです。どこの国でも議論されてきた課題です。カジノに限らずギャンブリングの問題を引き起こす可能性があるあらゆる種目を包括することになるでしょう。ですので、公営ギャンブル、パチンコを含めたすべてのギャンブリング種目をまたいで、問題あるギャンブラーの入場規制、発見、研究、およびリソースのベストプラクティスを確立するために、エビデンスベースの研究をする必要があります。
ブレンダン・バスマン Global Market Advisors パートナー
9月4日、政府は統合型リゾート(IR)に関する基本方針案を開示した。そこでは改めて、国際的なMICEビジネスが展開されることがIR開設の意義であると説明されている。では、ゲーミング産業としてのインパクトはどの程度のものなのか、GMAのブレンダン・バスマン氏に聞いた。〔文中敬称略〕
by Tsuyoshi Tanaka(Amusement Japan)
Brendan D. Bussmann
──日本型IRは、IR整備法にもIR基本方針にも明記されているように、MICEビジネスの振興を大きな狙いに据え、非常に大規模なMICE施設を作ることを要求しています。
バスマン MICE(Meeting、Incentive tour、Convention・Conference、Exhibitionの頭文字。主要なビジネストラベルの形態)はラスベガスやシンガポールなどのデスティネーション(旅行目的地)にとって、今も成長促進要素のひとつであり続けています。日本は2020年のオリンピックの後も観光産業の成長を促進するためにMICE振興を必要としていますので、どのIRの開発おいてもMICEビジネスは重要な役割を果たします。大阪、横浜や東京などの大都市には、MICEの大規模開発をサポートし、既存の施設を補完する手段があります。ただし、地方都市に作られるIRにとっては、IR整備法で規定されているような大規模なMICE要件はチャレンジングな課題です。MICEビジネスは全国のどんな場所でも、経済を活性化させるドライバーとなり得ますが、IR整備法で要求されているような大規模なMICEビジネスを軌道に乗せるまでにはかなりの時間を要するでしょう。
──それだけ重要な要素になるということは、MICEのノウハウや実績は、IR事業者選定にも影響するのでは?
バスマン もちろん、MICEビジネスを理解しているIR事業者は、MICE施設をメインのデスティネーションにおいていない事業者より優位な立場にあります。日本がアジアの次の主要なMICEデスティネーションとして浮上するので、IR事業者はMICEの専門知識を持ち、かつ日本市場にカスタマイズする必要があります。日本に参入するIR事業者は、過去の成功実績にとどまらず、新しいイベントを誘致すると同時に、MICEビジネスを次のレベルに引き上げ優れたサービスを提供しなければなりません。
──もしMICEによって海外からビジネスツーリストを誘客できなかったら、カジノもじゅうぶんな収益を上げることはできないでしょう。カジノ収益に関しては、地域の住民に大きな期待をすべきでないと思います。
バスマン 日本のゲーミング市場は、世界の主要なデスティネーションのいずれかに匹敵する世界最大規模の市場になる可能性を秘めています。Global Market Advisors(GMA)は2017年に日本に関する白書をリリースしましたが、日本全国に6つのIRができた場合のゲーミング収益予想は合計約250億ドル(約2兆7千億円)となり、その34%が海外からのツーリストによるものると予測しました。大阪と横浜の2カ所に大型のIRが作られた場合は合計125億ドル(約1兆3500億円)で、25%が海外からのツーリストによるもの。ゲーミング収益の規模はIRができる場所によっても規定されますが、大規模な施設はより大きな売上を上げます。これは商圏人口もツーリスト来街者数も地方都市よりも多いからです。
プロフィール
Global Market Advisors(GMA)は、ゲーミング産業およびホスピタリティ産業の調査およびコンサルティングにおいて世界をリードするアメリカ企業で、ラスベガス、デンバー、バンコクにオフィスを持っている。Brendan Bussmannは、ホスピタリティ、ヘルスケア、エネルギー、高等教育、およびスポーツの分野での政府業務、コミュニケーション、およびビジネス開発の幅広いバックグラウンドを持つエグゼクティブ。8月27日に佐世保商工会議所・長崎マリンIR推進協議会が開催した地域企業向けセミナーに招聘され講師を務めた。
Global Market Advisors(GMA)は、ゲーミング産業およびホスピタリティ産業の調査およびコンサルティングにおいて世界をリードするアメリカ企業で、ラスベガス、デンバー、バンコクにオフィスを持っている。Brendan Bussmannは、ホスピタリティ、ヘルスケア、エネルギー、高等教育、およびスポーツの分野での政府業務、コミュニケーション、およびビジネス開発の幅広いバックグラウンドを持つエグゼクティブ。8月27日に佐世保商工会議所・長崎マリンIR推進協議会が開催した地域企業向けセミナーに招聘され講師を務めた。
手軽なギャンブル・レジャーはカジノの影響を受けない
──つまり2年前の時点では、大阪と横浜の2カ所にIRが開業した場合、国内市場から約1兆円のゲーミング収益があると予測したのですね。それはパチンコ市場規模の約3分の1に相当します。
バスマン 我々の白書の後に成立したIR実施法では3つが上限となりましたし、予想していなかった日本居住者に6000円の入場料が課せられることになり、今では2年前の推計値は高めなものと言えます。ですが既存の公営ギャンブルやパチンコ産業の市場規模が示す通り、日本には巨大なゲーミング市場があるのです。IRのカジノには6000円の入場料が課されるために、IRの外側に位置する、既存のギャンブル市場の中の「手軽な遊び」の領域は依然として強固な市場であり続けるでしょう。地元の多くの人は、ちょっとした時間にギャンブルを遊ぶことを選んだとしても、6000円という入場料を払うことをためらうでしょう。重要なのは、カジノゲームとは、現在日本では提供されていない新しいエンターテインメントということです。いままでギャンブル・レジャーを遊んでいない日本居住者や、海外からやってくるツーリストの両方を惹きつけるのです。
──日本IRのギャンブル依存症対策についてはどうお考えですか?
バスマン 日本でも議論されているとおり、レスポンシブルギャンブリングは、IR開発において重要なものです。どこの国でも議論されてきた課題です。カジノに限らずギャンブリングの問題を引き起こす可能性があるあらゆる種目を包括することになるでしょう。ですので、公営ギャンブル、パチンコを含めたすべてのギャンブリング種目をまたいで、問題あるギャンブラーの入場規制、発見、研究、およびリソースのベストプラクティスを確立するために、エビデンスベースの研究をする必要があります。
profile
Global Market Advisors (GMA) is the world’s leading gaming and hospitality research and consulting firm. The company is well-regarded for its independence and quality of thought leadership. Brendan Bussmann is a seasoned executive that has an extensive background in government affairs, communications, and business developm
Global Market Advisors (GMA) is the world’s leading gaming and hospitality research and consulting firm. The company is well-regarded for its independence and quality of thought leadership. Brendan Bussmann is a seasoned executive that has an extensive background in government affairs, communications, and business developm
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