フランシスコ・ビダル アドミラル カジノ COO
Francisco Javier Vidal Caamaño
COO - Director of Operations ADMIRAL CASINOS SPAIN
カジノディーラーの多くは1、2年もするとたいていの種目のディーリングは覚えてしまい、そこから急速に知識の吸収量はフラット化し、同じ作業の繰り返しの中で、「飽き」が始まるのが現実。しかし空調が効いた空間、座り仕事、定期的な休憩時間と、恵まれた労働環境にあるため自ら辞める従業員は少ない。管理職ポストの登用に生え抜き優先主義を掲げるNOVOMATIC GROUPのフランシスコ・ビダルCOOは、この問題を乗り越えるために「Up or Out」制度の導入を提唱している。
アカデミックな視点からのIR産業の捉え方にも関心を寄せ、7月に東京を訪れたビダルCOOに聞いた。〔文中敬称略〕by Tsuyoshi Tanaka (Amusement Japan)
──カジノ企業においては、ディーラーの「能力開発」をどう定義していますか? ディーリングのプロフェッショナルであればいい、という考え方は一般的ですか?
ビダル 私の見解では、ほとんどのサービス業は、最前線の従業員について同じ課題に直面しているはずです。それは、「どうしたら彼らに最大限に活躍してもらえるか」「彼らの生産性と社会的価値を高めるために企業は何ができるのか」というものです。カジノディーラーの場合は、その基本的な仕事は反復的な性質ですが、当社は、いかにしてゲストにギャンブリングを楽しんでもらい顧客体験を向上するかに焦点を合わせています。そのため、ディーリングの技術向上だけでなく、プレイヤーとうまくやり取りする能力を高めることが必要だと考えています。私は昔、ラスベガス、リノ、ラテンアメリカのいくつかのカジノで、ディーラーをエンターテイナー、いわゆる「ディーラーテイナー」として育成しようとするプログラムを見てきました。とくに、ゲーム経験の浅いプレイヤーに対してフレンドリーな体験を提供しようという場合、非常にいいアプローチだと思います。顧客体験の向上に直接的な関連がない、例えばマーケティングやファイナンンスなど広範なトレーニングプログラムを全従業員に対して提供することは、あまり意味がないというのが私の考えです。一部の従業員に提供されればよいものです。
──一部の従業員とは?
ビダル ディーラーとしてスタートすることは、カジノ産業への入口として良い方法です。現実には2年を過ぎると、目の前の反復的な業務はできるものの、それ以上の成長が止まるディーラーが大勢いるのが現実です。しかし、ゲストやオペレーションスタッフとのやり取りに慣れて、ゲーミングフロアで何が役に立ち何が役に立たないか、規律やストレスの下で働くことを学んでいく従業員もいます。これは長期にわたって有用なスキルです。こういったことを身につけた従業員は将来のマネジャー候補になるので、彼らに対してビジネス教育が施されることになります。従業員に対するビジネス教育には多くの費用と時間がかかるので、それを受けるのは従業員の権利ではなく特権です。こういった教育を受けられることが従業員にとっての野心的な目標にできれば、すべてのディーラーにとってより魅力的なものになります。しかし結果的には、ある時点で解雇せざるを得ない従業員の一群というべきものが生じます。
進歩するつもりがないなら会社に留まるべきでない
──その「特権」を目指さない従業員は解雇の対象なのですか?
ビダル はい。なぜなら、進歩するつもりがないならば、会社に留まるべきでないからです。そして選ばれた少数が会社の未来のリーダーになるためのビジネス教育を受けることになります。先ほども述べたように、全員に高度なビジネストレーニング・プログラムを実施することは財源の浪費です。重要なことは”勝者”に対する処遇を間違えないことです。これは絶対に実力主義的なプロセスでなければならず、最高の中の最高の人材だけを訓練して昇進させなければなりません。なおかつ、従業員の大多数がそれを公平なプロセスだと思えるべきです。
──仮に、10年間カジノディーラーとして働いて解雇された場合、ディーラー以外の職に就こうと思った場合、労働市場ではどのように評価されていますか?
ビダル ディーラーとして他のカジノで採用されることは難しくないでしょうが、他の仕事に就こうと思った場合、ディーリング技術を持っているだけでは労働市場での価値は極めて低いでしょう。しかし、当社で働いてきたことが評価されないのは遺憾です。昨今、「企業の社会的責任」という言葉がよく使われますが、現実にはこの考えに本当にコミットしている企業は非常に少なく、多くの企業はこれを単なるお題目、世間での会社のイメージを良くするためのマーケティングと広報の費用と見ています。しかし、カジノを含めたホスピタリティ産業においては最前線の従業員こそが直接ゲストに接しているのです。私は、企業が真っ先に責任をもってケアすべきステークホルダーは従業員だと思います。ですから当社はたんに機械的なディーリング技術のみを教えるのではなく、ホスピタリティスタッフ、エンターテインメントスタッフとして育成しています。
──ご自身はディーラーからキャリアをスタートされて、どのように昇進したのですか?
ビダル 私の場合はロンドンでディーラーとしてキャリアをスタートし、ラスベガスに移りました。次にスペインの会社に転職しフロアマネジャーのポストを得ました。そこで5年働いた後、リオデジャネイロのPontifical Catholic UniversityのMBAコースで戦略マネジメントを学びました。ゼネラルマネジャー、オペレーティングディレクターと昇進した後も必要に応じて、大学のエグゼクティブ向けのビジネスコースでファイナンス、リサーチメソッド、リーダーシップ開発などをアップデートして、できることのレベルを上げていきました。カジノ運営の専門知識についてはネバダ大学リノ校で、「Slots Operations Management」「Marketing Strategies for the Casino Industry」「Executive Development Program」を修了しています。仕事で役立つことはすべてこうして学び、異なる会社や異なる国で働き、それまでとは違う運営方法を経験しました。UK、USA、スペイン、ブラジル、パナマ、メキシコ、クロアチア、ドミニカ共和国など10カ国で働いてきました。様々な文化に触れ、様々な人とのつながりを得たことも大きいですね。
経営システムの中に人材の「陳腐化政策」を盛り込むべき
──日本のパチンコホールでも、今ではホールスタッフは接客業という認識を持っています。
ビダル そういう意識で働いている従業員は価値があるのです。カジノディーラーにせよパチンコホールスタッフにせよ、彼らの重要な役割は、ゲストに再び来てもらうことですから。しかし、カジノディーラーと同じように、30歳を前にする頃には、日々の仕事が退屈になっているという方もいるでしょう。現状の仕事に退屈しながらも多くの従業員が現在働く業界から去るという難しい決断をするつもりはないことを、私は知っています。多くの人はできるだけ長く現状の仕事にとどまり、そこで自分の時間を失いながらも、新しい場所で最初からやり直さなければならないという過酷さをぎりぎりまで避けようと考えます。しかし、正しい決断はほとんどの場合、苦痛を伴うものです。
──よほどのきっかけがない限り、自ら業界を去る決断は難しいと思います。
ビダル カジノ企業にもまったく同じことが言えるのですが、将来的に企業には2つの選択肢があります。ひとつは、ディーラーに継続的な訓練を提供し、社内の様々な領域で働けるような広範なスキルセットを身に着けさせるための能力開発にコミットし投資することです。莫大な投資です。こうして会社内で従業員のライフサイクルを延長するのです。スロットマシン、ロッテリーやF&B、カジノホテルであれば宿泊部門など多くの機能がありますので、ディーラーが総合的な顧客サービスの専門家になることも可能でしょう。
──パチンコホールには、カジノホテルほど多くの部門がありません。そのため、事業の多角化を模索している企業もあります。
ビダル そういう状況であるなら、企業が責任をもって行動し、人員を編成しなければなりません。2つめの選択肢です。冒頭にお話しした “Up or Out” システム、すなわち「昇進するか去るか」の採用です。これを本格導入した場合、現場の最前線のスタッフは定年退職するまで続けられる職業ではなくなります。数年間働き、その能力と意欲に応じて、将来の管理職候補と認められない従業員には去ってもらいます。これは会社経営システムの中の「陳腐化政策」です。マーケティングで用いられる「計画的陳腐化」(製品寿命が十分にあるにもかかわらず、その既存製品の寿命を短縮させてしまうような新製品をあえて市場に投入することで需要を喚起し市場を活性化させる)と同じです。従業員は常にゲスト(市場)を刺激する新鮮な存在でなければなりません。
──NOVOMATIC GROUPではすでに導入しているのですか?
ビダル ADMIRALブランドのランドベース・カジノはスペイン国内にはセビリアとサン・ロケの2軒あり、グラナダに3軒目を開業準備中ですが、ここで導入することを検討しています。陳腐化政策のサイクルが従業員に理解されていれば、一般社員であれストアマネジャーであれ、自らを向上させなければ解雇されると理解します。これは「創造的な破壊」であり、企業を健全な状態に保つ働きをします。残した一部の従業員はいい仕事をし、優れた対人スキルと素晴らしい職業倫理を備えた人材です。彼らを、新規採用の基準になる大きな価値のある人材としてロールモデルにするのです。そして管理職になる可能性を示したこういった人材にこそ、教育トレーニングという投資の大半を投じるべきなのです。
Francisco Javier Vidal Caamaño
COO - Director of Operations ADMIRAL CASINOS SPAIN
カジノディーラーの多くは1、2年もするとたいていの種目のディーリングは覚えてしまい、そこから急速に知識の吸収量はフラット化し、同じ作業の繰り返しの中で、「飽き」が始まるのが現実。しかし空調が効いた空間、座り仕事、定期的な休憩時間と、恵まれた労働環境にあるため自ら辞める従業員は少ない。管理職ポストの登用に生え抜き優先主義を掲げるNOVOMATIC GROUPのフランシスコ・ビダルCOOは、この問題を乗り越えるために「Up or Out」制度の導入を提唱している。
アカデミックな視点からのIR産業の捉え方にも関心を寄せ、7月に東京を訪れたビダルCOOに聞いた。〔文中敬称略〕by Tsuyoshi Tanaka (Amusement Japan)
(プロフィール)
アドミラル・カジノ・スペイン(NOVOMATIC GROUP)」のCOO、オペレーションディレクターとして、マーケティング、F&B、IT、HR、セキュリティー&サべーランス、会計監査、ゲーミングオペレーションの指揮を執る。
1994年にスペインのUSC(University of Santiago de Compostela)経済・経営学部卒業後、カジノディーラーとしてゲーミング業界のキャリアをスタート。ロンドン(Grosvernor Casino)、ラスベガス(Luxor Casino)で2年間勤務後、スペインのレジャー企業GROUP COMARに移りカジノフロアマネジャー、オペレーションマネジャーとして経験を積む。CRISAでオペレーションディレクターを務めた後、複数のカジノ企業を経て2019年1月から現職。この間、Pontifical Catholic UniversityでMBAを取得したほかネバダ大学リノ校ほか複数の大学のビジネスプロフラムを修了。
'Up or Out' system would make the company healthy.1994年にスペインのUSC(University of Santiago de Compostela)経済・経営学部卒業後、カジノディーラーとしてゲーミング業界のキャリアをスタート。ロンドン(Grosvernor Casino)、ラスベガス(Luxor Casino)で2年間勤務後、スペインのレジャー企業GROUP COMARに移りカジノフロアマネジャー、オペレーションマネジャーとして経験を積む。CRISAでオペレーションディレクターを務めた後、複数のカジノ企業を経て2019年1月から現職。この間、Pontifical Catholic UniversityでMBAを取得したほかネバダ大学リノ校ほか複数の大学のビジネスプロフラムを修了。
──カジノ企業においては、ディーラーの「能力開発」をどう定義していますか? ディーリングのプロフェッショナルであればいい、という考え方は一般的ですか?
ビダル 私の見解では、ほとんどのサービス業は、最前線の従業員について同じ課題に直面しているはずです。それは、「どうしたら彼らに最大限に活躍してもらえるか」「彼らの生産性と社会的価値を高めるために企業は何ができるのか」というものです。カジノディーラーの場合は、その基本的な仕事は反復的な性質ですが、当社は、いかにしてゲストにギャンブリングを楽しんでもらい顧客体験を向上するかに焦点を合わせています。そのため、ディーリングの技術向上だけでなく、プレイヤーとうまくやり取りする能力を高めることが必要だと考えています。私は昔、ラスベガス、リノ、ラテンアメリカのいくつかのカジノで、ディーラーをエンターテイナー、いわゆる「ディーラーテイナー」として育成しようとするプログラムを見てきました。とくに、ゲーム経験の浅いプレイヤーに対してフレンドリーな体験を提供しようという場合、非常にいいアプローチだと思います。顧客体験の向上に直接的な関連がない、例えばマーケティングやファイナンンスなど広範なトレーニングプログラムを全従業員に対して提供することは、あまり意味がないというのが私の考えです。一部の従業員に提供されればよいものです。
──一部の従業員とは?
ビダル ディーラーとしてスタートすることは、カジノ産業への入口として良い方法です。現実には2年を過ぎると、目の前の反復的な業務はできるものの、それ以上の成長が止まるディーラーが大勢いるのが現実です。しかし、ゲストやオペレーションスタッフとのやり取りに慣れて、ゲーミングフロアで何が役に立ち何が役に立たないか、規律やストレスの下で働くことを学んでいく従業員もいます。これは長期にわたって有用なスキルです。こういったことを身につけた従業員は将来のマネジャー候補になるので、彼らに対してビジネス教育が施されることになります。従業員に対するビジネス教育には多くの費用と時間がかかるので、それを受けるのは従業員の権利ではなく特権です。こういった教育を受けられることが従業員にとっての野心的な目標にできれば、すべてのディーラーにとってより魅力的なものになります。しかし結果的には、ある時点で解雇せざるを得ない従業員の一群というべきものが生じます。
If Employees Don´t Improve, They Shouldn´t Be in The Company.
NOVOMATIC Groupはハイテクゲーミング機器(ゲーミング端末およびビデオ宝くじ端末)の製造者およびカジノ・ロッテリー・スポーツベット運営事業者で、世界50カ国以上に拠点を持ち、ソリューションを70カ国以上に供給している。世界中のグループ従業員は2万3千人以上で、2018年度の女性雇用比率は54%。2018年度の売上高は26.1億ユーロ(約3080億円)。
──その「特権」を目指さない従業員は解雇の対象なのですか?
ビダル はい。なぜなら、進歩するつもりがないならば、会社に留まるべきでないからです。そして選ばれた少数が会社の未来のリーダーになるためのビジネス教育を受けることになります。先ほども述べたように、全員に高度なビジネストレーニング・プログラムを実施することは財源の浪費です。重要なことは”勝者”に対する処遇を間違えないことです。これは絶対に実力主義的なプロセスでなければならず、最高の中の最高の人材だけを訓練して昇進させなければなりません。なおかつ、従業員の大多数がそれを公平なプロセスだと思えるべきです。
──仮に、10年間カジノディーラーとして働いて解雇された場合、ディーラー以外の職に就こうと思った場合、労働市場ではどのように評価されていますか?
ビダル ディーラーとして他のカジノで採用されることは難しくないでしょうが、他の仕事に就こうと思った場合、ディーリング技術を持っているだけでは労働市場での価値は極めて低いでしょう。しかし、当社で働いてきたことが評価されないのは遺憾です。昨今、「企業の社会的責任」という言葉がよく使われますが、現実にはこの考えに本当にコミットしている企業は非常に少なく、多くの企業はこれを単なるお題目、世間での会社のイメージを良くするためのマーケティングと広報の費用と見ています。しかし、カジノを含めたホスピタリティ産業においては最前線の従業員こそが直接ゲストに接しているのです。私は、企業が真っ先に責任をもってケアすべきステークホルダーは従業員だと思います。ですから当社はたんに機械的なディーリング技術のみを教えるのではなく、ホスピタリティスタッフ、エンターテインメントスタッフとして育成しています。
──ご自身はディーラーからキャリアをスタートされて、どのように昇進したのですか?
ビダル 私の場合はロンドンでディーラーとしてキャリアをスタートし、ラスベガスに移りました。次にスペインの会社に転職しフロアマネジャーのポストを得ました。そこで5年働いた後、リオデジャネイロのPontifical Catholic UniversityのMBAコースで戦略マネジメントを学びました。ゼネラルマネジャー、オペレーティングディレクターと昇進した後も必要に応じて、大学のエグゼクティブ向けのビジネスコースでファイナンス、リサーチメソッド、リーダーシップ開発などをアップデートして、できることのレベルを上げていきました。カジノ運営の専門知識についてはネバダ大学リノ校で、「Slots Operations Management」「Marketing Strategies for the Casino Industry」「Executive Development Program」を修了しています。仕事で役立つことはすべてこうして学び、異なる会社や異なる国で働き、それまでとは違う運営方法を経験しました。UK、USA、スペイン、ブラジル、パナマ、メキシコ、クロアチア、ドミニカ共和国など10カ国で働いてきました。様々な文化に触れ、様々な人とのつながりを得たことも大きいですね。
The low performing managers will know that they will be replace if they don’t improve.
──日本のパチンコホールでも、今ではホールスタッフは接客業という認識を持っています。
ビダル そういう意識で働いている従業員は価値があるのです。カジノディーラーにせよパチンコホールスタッフにせよ、彼らの重要な役割は、ゲストに再び来てもらうことですから。しかし、カジノディーラーと同じように、30歳を前にする頃には、日々の仕事が退屈になっているという方もいるでしょう。現状の仕事に退屈しながらも多くの従業員が現在働く業界から去るという難しい決断をするつもりはないことを、私は知っています。多くの人はできるだけ長く現状の仕事にとどまり、そこで自分の時間を失いながらも、新しい場所で最初からやり直さなければならないという過酷さをぎりぎりまで避けようと考えます。しかし、正しい決断はほとんどの場合、苦痛を伴うものです。
──よほどのきっかけがない限り、自ら業界を去る決断は難しいと思います。
ビダル カジノ企業にもまったく同じことが言えるのですが、将来的に企業には2つの選択肢があります。ひとつは、ディーラーに継続的な訓練を提供し、社内の様々な領域で働けるような広範なスキルセットを身に着けさせるための能力開発にコミットし投資することです。莫大な投資です。こうして会社内で従業員のライフサイクルを延長するのです。スロットマシン、ロッテリーやF&B、カジノホテルであれば宿泊部門など多くの機能がありますので、ディーラーが総合的な顧客サービスの専門家になることも可能でしょう。
──パチンコホールには、カジノホテルほど多くの部門がありません。そのため、事業の多角化を模索している企業もあります。
ビダル そういう状況であるなら、企業が責任をもって行動し、人員を編成しなければなりません。2つめの選択肢です。冒頭にお話しした “Up or Out” システム、すなわち「昇進するか去るか」の採用です。これを本格導入した場合、現場の最前線のスタッフは定年退職するまで続けられる職業ではなくなります。数年間働き、その能力と意欲に応じて、将来の管理職候補と認められない従業員には去ってもらいます。これは会社経営システムの中の「陳腐化政策」です。マーケティングで用いられる「計画的陳腐化」(製品寿命が十分にあるにもかかわらず、その既存製品の寿命を短縮させてしまうような新製品をあえて市場に投入することで需要を喚起し市場を活性化させる)と同じです。従業員は常にゲスト(市場)を刺激する新鮮な存在でなければなりません。
──NOVOMATIC GROUPではすでに導入しているのですか?
ビダル ADMIRALブランドのランドベース・カジノはスペイン国内にはセビリアとサン・ロケの2軒あり、グラナダに3軒目を開業準備中ですが、ここで導入することを検討しています。陳腐化政策のサイクルが従業員に理解されていれば、一般社員であれストアマネジャーであれ、自らを向上させなければ解雇されると理解します。これは「創造的な破壊」であり、企業を健全な状態に保つ働きをします。残した一部の従業員はいい仕事をし、優れた対人スキルと素晴らしい職業倫理を備えた人材です。彼らを、新規採用の基準になる大きな価値のある人材としてロールモデルにするのです。そして管理職になる可能性を示したこういった人材にこそ、教育トレーニングという投資の大半を投じるべきなのです。
Francisco Vidal is the current COO of Admiral Casinos in Spain (Novomatic Group). He has an extensive professional career of more than 20 years in the gaming sector, serving as COO for some of the biggest international companies of the industry. Mr Vidal has been in charge of daily operations management for more than 40 casinos in Europe and America.
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