スキップしてメイン コンテンツに移動

大阪・夢洲IRとMGMリゾーツの状況

10月9日、観光庁はようやく統合型リゾート(IR)整備のための自治体からの認定申請受付期間を、これまでの「2021年1月4日から7月30日まで」から9カ月延期する案を発表した。吉村洋文大阪府知事はこれを受け「延期は妥当な判断」とコメントした。

IR誘致を表明している自治体のうち、大阪府・市、和歌山県はすでに事業者公募(RFP)を開始したものの、そのプロセスは中断した状態だ。大阪府・市が全国に先駆け事業者公募を開始したのは2019年12月。今年2月に参加申込を締め切り、応募はMGM・オリックスコンソーシアムの1事業者だけだったことを公表している。当初、大阪府・市は提案書の提出期限を4月、事業者決定を6月としていたが、新型コロナ・パンデミックの影響で事業者の中で交渉が進められなかったことや、政府による基本方針が公表されなかったことなどから、9月時点でこれらの提出期限を「当面の間延長する」としていた。これにより、大阪・夢洲でのIR開業時期は、早くとも2027年度にずれ込むことがほぼ確実となっていた。

大阪府・市が事業者公募を開始してから、状況は大きく変化している。MGMリゾーツは昨年暮れから今年1月にかけて、主要ホテル「ベラージオ」「サーカス・サーカス」「MGMグランド」と「マンダレイ・ベイ」を売却(セール&リースバック)した。当時のジム・ムーレン会長が、これによって得た資金を「日本を含む成長市場の開拓」に振り向けると語ったことは日本のメディアでも報じられた。だが、同社は2022年にマカオでのカジノ営業権の再入札を控えている(MGMチャイナ社の株式の55.95%を保有)という事情もある。営業を継続するためには、マカオにも大規模な追加投資が必要になるのだ。

2月には、MGMリゾーツ・インターナショナルのジム・ムーレン(Jim Murren)会長兼CEOが辞任を発表し、3月にウィリアム・ホーンバックル(William Hornbuckle)社長がCEOに就いた。全米のカジノが閉鎖され深刻な状況にある中で、新CEOが日本市場に対して戦略を見直す可能性があるのではと懸念されていた。そのホーンバックルCEOは、7月30日に行われた同社の第2四半期業績発表において「大阪への投資が完全に『オールイン(全額勝負)』ではない、という状況を肯定的にとらえている(※)」と言及した。
同社の第2四半期の収益は91%減少し、純損失は8億5,700万米ドル(約900億円)にのぼ、第3四半期も厳しい業績が発表される見込みだ。IR参入レースから撤退しないまでも、出資比率を大きく下げた形でコンソーシアムメンバーとなる可能性も大いにある。

 

※ “We also like that we are not fully ‘all-in’ on this investment and we like the fact that there is probably going to be a delay and a reopening of some of the conversations that will hopefully make this a better investment for anyone that is interested in it, most notably us.”

コメント

このブログの人気の投稿

スリランカのカジノ「BALLY’S」24周年セレブレーション

スリランカの実質的な首都機能を担う最大都市コロンボにあるカジノ『BALLY’S COLOMBO』が10月18日から27日の10日間、開業24周年を記念するイベントを開催した。by Tsuyoshi Tanaka (Amusement Japan) スリランカはインド南端のインド洋の島国で、欧米人の間では美しいビーチを持つリゾート地として人気が高い。日本では「セイロン島」という呼び名のほうが知られているかもしれない。紅茶(セイロン・ティー)の産地として知らない人はいないだろう。女性の間では、世界三大医学の一つとされる「アーユルヴェーダ」の本場として有名だ。 バンダラナイケ国際空港からクルマで約40分のコロンボには現在、スリランカ政府からライセンスを得て営業しているカジノが3軒。その中でもっとも長い経験を持ち、もっとも規模が大きいのがBALLY’S COLOMBO(バリーズ・コロンボ)だ。その前身は1994年に開業した、当時スリランカ唯一のカジノ。なお、他の2つのカジノのうちひとつはBALLY'S系列だ。 BALLY’S COLOMBOにはゲーミングテーブルが約100台、ゲーミングマシン(スロットマシンとETG)が約100台。テーブルゲームはバカラ、ブラックジャック、大小、ルーレット、テキサスホールデム、アジアンポーカー、スリーカードポーカーなど多彩。また、カジノ内で稼働しているテーブルを使ったライブ式のオンラインベッティングも提供しており、会員であればスマートフォンやタブレットからプレイに参加することができる。 昨年と変わった点として気づいたのは、カジノフロアのカーペットが張り替えられたことと、EGTの設置されている向きが変わったと、レストランが改装されたこと、ハイリミットエリアの壁が外されたことなど。 このカジノのゲストの95%~97%は外国人で、その9割以上を占めるのがインド人。次に多いのは様々な国籍を持つ中国系人。日本人はごくまれだという。スリランカ人の入場は禁じられていないが、BALLY'Sは自国民については会員制にしている。ほぼ外国人向けのカジノということもあってか、館内で「Responsible Gambling」という文字は見かけなかった。 10月26日の創業日を祝う18日から27日のからのセレブレ...

オンラインカジノ 日本から100万人超が参加か?

海外のオンラインカジノ事業者が日本市場へのプロモーションを強化している。同じギャンブル系レジャーであるパチンコ・パチスロ遊技者とオンカジの親和性は高いはずだ。 オンラインポーカーに関する情報を発信するメディア「PORKERFUSE」に9月、「Online Gambling Booming in Japan(日本におけるオンライン賭博の流行)」と題する記事が掲載された。 オンラインゲーミング事業者が日本市場に期待していることは間違いないが、現在、導入が進められようとしている統合型リゾート(IR)に関する法律では、カジノはランドベースカジノを前提としている。そもそもカジノは、観光振興政策のためのIRに付随するものなので、国内におけるオンラインカジノ事業の合法化は、この文脈の中ではまったく想定されていない。筆者は昨年1月に、内閣官房でIR推進を担当していた方から直接、「オンラインゲーミングの解禁が議題に上がったことはない」と聞いている。 先の記事は、「日本にはギャンブリングレジャーの種目が少ないというわけではないし、 パチンコ という非常に人気のある娯楽がある」としながらも、これらには物理的な制約があるため、「日本のプレイヤーはますますインターネットに目を向け、海外のオンラインカジノが日本人向けにゲームを提供している」としている。 この記事が指摘しているように、明らかに日本人に向けて、日本語でさまざまな特典を提示してオンラインカジノ・ゲームに誘導しているサイトがいくつもあることから、すでに多くの日本人が参加していると考えるのは不自然なことではない。しかも、そういったサイトの広告を見かける頻度は今年に入り非常に増えたと感じることからも、営業活動を強化していることがうかがわれる。 いったいどれほどの市場がすでに形成されているのかは見当もつかないが、もっとも親和性が高い属性と考えられる パチンコ・パチスロプレイヤー(以下、遊技者) を対象に本誌が8月に実施したアンケート調査の中で、オンラインギャンブル(ライブストリーミング、iGaming、スポーツベットを含む)で遊んだ経験の有無などを尋ねた。   パチンコ・パチスロ遊技者では若年層、高頻度層でオンカジ参加率が高い その結果、調査対象である首都圏在住の20代~70代(各年代のサンプル数は均等に割り付け)の遊技者の27....

国内家庭用ゲーム市場 2019年微増し4,369億円

ゲーム総合情報メディア「ファミ通」を発行するKADOKAWA Game Linkageの推計によると、2019年の国内家庭用ゲーム市場規模は前年比0.6%増の4368.5億円だった。 市場の内訳は、ハードが前年比6.2%減の1,595.4億円、ソフトが同5.0%増の2,773.0億円。ソフト市場は3年連続でプラス成長。ソフト市場は、おもに店頭および通信販売で決済されたパッケージソフトと、オンライン決済(ダウンロード販売、サブスクリプション、追加課金等)の金額の推計が含まれている。 ダウンロード版を含めた年間ソフト首位は「ポケットモンスター ソード・シールド」で年間推定販売本数は372.5万本、2位は「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」で年間推定販売本数は137.2万本。 2020年は「あつまれ どうぶつの森」(任天堂/2020年3月20日発売予定/Switch)や「ファイナルファンタジーⅦ リメイク」(スクウェア・エニックス/2020年4月10日発売予定/PS4)といった新作が登場予定。ハード市場も、プレイステーション5とXbox Series Xの発売が発表されている。KADOKAWA Game Linkageは、「ゲーム市場の新たな盛り上がりが期待される」としている。 本市場推計の集計期間は2018年12月31日~2019年12月29日。

ダイナム 第三者評価機関調査で全分野AAA獲得

全国46都道府県にパチンコホールを展開するダイナム(東京都荒川区)は、一般社団法人パチンコ・トラスティ・ボードによる評価調査を受け、評価対象の全10分野において上場企業の模範となるレベルの最高ランク「AAA」評価を得た。 パチンコ・トラスティ・ボード(Pachinko-Trusty Board)は遊技業界外の有識者・専門家によりる構成する組織で、パチンコホール企業の「コンプライアンス」「コーポレートガバナンス」の評価調査を行っている。 評価調査の対象領域は下記の10分類(96項目)。 ガバナンス体制 経営者による基本的姿勢 基本的フレームワーク 財務管理体制 反社会的勢力への対応 社会的要請への対応 法令遵守体制(その他の重要法令) 法令遵守体制(風適法) 法令遵守体制(労働法) 内部監査体制 なかでも「パチンコ・パチスロへの過度なのめり込み問題対策」については、「パチンコ店における依存(のめり込み)問題対応ガイドライン」(パチンコ・パチスロ産業21世紀会)の順守の他、以下の点がガイドラインの水準を超えていると評価された。 ホール企業の合同勉強会を定期的に行っていること。 業界初の試みとして、パチンコ依存問題についての行動実態調査(アンケート)を実施・研究していること。 社会福祉系団体主催の勉強会に主体的に参加していること。 2019年度のダイナム評価調査は、2019年12月2日から20日の間、同社本社ビル及びPTBによって選出された5店舗の視察とヒアリングによって実施された。 Dynam, the largest pachinko operator, earned the highest ranking 'AAA' in a third-party evaluation of compliance and corporate governance. The evaluation research was conducted by Pachinko-Trusty Board in December 2019.

サンシティが和歌山IRから撤退を公式表明

サンシティグループ ホールディングス ジャパン(以下、サンシティ・ジャパン)は5月12日、日本での統合型リゾート事業(和歌山県特定複合観光施設設置運営事業)における設置運営事業者公募(RFP)から撤退することを表明した。同社はマカオのジャンケット事業者サンシティグループ(太陽城集団)の最高経営責任者兼取締役である周焯華(アルビン・チャウ)氏の個人出資による独立会社。 周氏はプレスに向けて、「 新型コロナウイルス感染拡大による業界への甚大な影響と、世界中の膨大な数の企業における不確実性は今後も長期にわたり続く恐れがあること 、また日本のIR区域認定手続においては、当初の予定よりも大幅に時間を要すると想定される中で、未だに多くの事柄が不透明であることなど、事業者としてのリスクを鑑み、熟考の上で厳しい決断をするに至りました 」とコメントしている。   ただし、撤退の背景にはカジノ業界メディアがかねてから懸念していた、オーストラリアにおけるマネーロンダリングや反社会的勢力との関係などがあると見られている。 今年2月9日、オーストラリアのカジノ運営会社クラウン・リゾーツが申請していた新規カジノの営業に対して、ニューサウスウェールズ州のゲーミング規制当局が設立した調査委員会が「クラウン・リゾーツは適格性を欠いている」と結論を下した。その判断の根拠になった 報告書の中で、「サンシティグループはクラウン・リゾーツの運営するカジノ施設内で違法行為を行い、犯罪組織とつながりがある」と指摘 されている。 サンシティ・ジャパンは同月22日に、周氏は反社会的勢力と一切関与していない旨の声明を発表し、上記報告書(通称 『バーギン・レポート』 )内の記述を否定した。 和歌山県のIR事業者RFPにはサンシティ・ジャパンとクレアベスト(カナダ)の2者が応募しており、県が公表しているスケジュールでは、今春に優先権者を選定し基本協定を締結する予定。     *   *   * [関連記事]  ▼ 日本IR導入の現状 RFPプロセスにあるのは4自治体 2021-04-28 ▼ サンシティグループ 反社会的勢力との関与を否定 2021-02-26 ▼ サンシティグループ HOIANA  WTAの2部門でアワード受賞 2020-12-28 ▼ 和歌山県 IR開...