Gaming floor workers will be barred casino entry for off-work hours from December.
最大のポイントは、カジノフロアにおける業務に従事するスタッフの、業務外(余暇)時間におけるカジノフロア入場禁止が盛り込まれたこと。具体的には、カジノ運営会社に所属するゲーミングテーブル、ゲーミングマシン、キャッシャー、広報、料飲、清掃、警備・サーベイランスに関わる全スタッフが対象で、さらにカジノ施設内にVIPルームを展開する仲介業者(ジャンケットプロモーター)のスタッフも含むとした。
改正法は12月19日付で公布され、禁足令にあたる部分は1年の経過期間を経て今年12月に施行される。施行が間近に迫った今、各IR関連企業は従業員への説明会を繰り返している。
カジノ運営会社は改正法施行後30日以内にカジノ規制当局(DICJ)に対して対象者の名簿を提出する必要がある。マカオの主要日刊紙「澳門日報」が報じた内容によれば、対象者の総数は約5万4000人に上る。なお、例外として、春節(旧正月)三が日については禁止が解かれるとし、すでに入場禁止対象となっている公務員と同じ扱いとした。
違反者へのペナルティは、1000〜1万マカオパタカ(約1万4000〜14万円)の罰金を科すと規定。取り締まりの方法は、博彩監察協調局(DICJ)の検査官による巡回、カジノ運営企業及び第三者による通報の3つで、DICJが24時間体制の通報ホットラインを設けるとしている。なお、マカオのカジノ施設は入場口での身分確認を実施しておらず(入場下限年齢である21歳未満に見える場合には身分証チェックを実施)、人の目によるチェックが基本だ。よって、対象者数が数万人規模に上るため、他社の従業員も含めた違反者の発見は容易ではないと想像される。
今回の法改正は、マカオ政府によるギャンブル依存対策の一環、つまりカジノフロア勤務者を保護するためと説明されている。DICJは立法会での審議の場で、教育・福祉機関と連携するなどして地域コミュニティにおけるギャンブル依存の予防と治療対策に取り組むマカオ政府社会工作局(IAS)が2011年に立ち上げた「ギャンブル依存中央登録システム」の登録者のうち、無職に続いてカジノディーラーとカジノサービススタッフが多いことを挙げた。このような統計が出るのは、カジノが大きな産業であり従事者が多いことも一因だが、カジノフロアで勤務していると大きなカネが動く瞬間を目の当たりにすることも多く、豪華絢爛な非日常空間にいる時間が長いことも相まって、金銭感覚が麻痺しがちだと言われる。また、ゲームのルールを熟知したディーラーは、自分なら勝てると錯覚することもあるという。
実際、マカオでは、カジノディーラーがギャンブルで借金を抱えた結果、犯罪に手を染める事案は皆無とは言えない。
手口としては、カジノテーブルでの勤務中にチップを制服の隙間などに隠して着服、共犯者を相手に負けた時でもチップを払い出す、もしくは両替を装ってチップを盛るといったものがある。記憶に新しいものとしては2018年1月に、VIPルームのテーブルで勤務中、同じ部屋にいたディーラーに突然「伏せろ」と命じ、その隙に担当テーブルにあった約6億円超のチップを奪って逃走するという大それた事件が発生した。チップは少し分厚いコイン状のもので、1枚約140万円相当という高額なものもある。キャッシャー窓口に持ち込めば、身分証の確認の必要なく簡単に現金と交換することができる。
ただし、カジノ施設には最新鋭の監視システムが導入されており、不正行為はほぼ露見し、重い刑罰が科される。そのことは、カジノ企業の従業員がなら誰もが承知のはず。つまり、それほどまでに借金などに追い込まれるケースが少なからずあるということだ。
今回の改正法には、違反して入場した従業員のケアも盛り込まれていて、違反者にギャンブル依存の形跡が確認された場合、本人の同意を得た上でDICJからIASに個人資料が伝達され、IASが介入できると規定した。これまでにはなかった潜在的ギャンブル依存者を発見し、治療に導く機会を生み出し、セーフティネットの拡大につなげがることが期待される。
近年、マカオ当局とカジノ運営企業は、カジノ従業員に対するレスポンシブル・ゲーミング啓蒙活動を通じたギャンブル依存対策に力を注いでおり、今後もより積極的な展開が見込まれる。
文・写真=勝部悠人(マカオ新聞 編集長)
カジノ運営企業の従業員の業務時間外のカジノフロアへの入場とカジノフロア内における業務及びギャンブルへの参加条件を定める法律『規範進入娛樂場和在場內工作及博彩的條件』の改正法案がマカオ立法会全体会議で賛成多数で可決されたのは昨年12月18日。最大のポイントは、カジノフロアにおける業務に従事するスタッフの、業務外(余暇)時間におけるカジノフロア入場禁止が盛り込まれたこと。具体的には、カジノ運営会社に所属するゲーミングテーブル、ゲーミングマシン、キャッシャー、広報、料飲、清掃、警備・サーベイランスに関わる全スタッフが対象で、さらにカジノ施設内にVIPルームを展開する仲介業者(ジャンケットプロモーター)のスタッフも含むとした。
改正法は12月19日付で公布され、禁足令にあたる部分は1年の経過期間を経て今年12月に施行される。施行が間近に迫った今、各IR関連企業は従業員への説明会を繰り返している。
カジノ運営会社は改正法施行後30日以内にカジノ規制当局(DICJ)に対して対象者の名簿を提出する必要がある。マカオの主要日刊紙「澳門日報」が報じた内容によれば、対象者の総数は約5万4000人に上る。なお、例外として、春節(旧正月)三が日については禁止が解かれるとし、すでに入場禁止対象となっている公務員と同じ扱いとした。
違反者へのペナルティは、1000〜1万マカオパタカ(約1万4000〜14万円)の罰金を科すと規定。取り締まりの方法は、博彩監察協調局(DICJ)の検査官による巡回、カジノ運営企業及び第三者による通報の3つで、DICJが24時間体制の通報ホットラインを設けるとしている。なお、マカオのカジノ施設は入場口での身分確認を実施しておらず(入場下限年齢である21歳未満に見える場合には身分証チェックを実施)、人の目によるチェックが基本だ。よって、対象者数が数万人規模に上るため、他社の従業員も含めた違反者の発見は容易ではないと想像される。
マカオのカジノフロアの入口には身分証明書を確認するためのゲートはなく出入は自由だ
現在は21歳未満の者の入場を禁ずる掲示があるのみだが、実際には公務員の立ち入りが禁止されている。今年12月からはカジノフロアで勤務する様々な職種の従業員およびジャンケット事業者の従業員のプライベートでの立ち入りが禁止される
ギャンブル依存対策の一環
今回の法改正は、マカオ政府によるギャンブル依存対策の一環、つまりカジノフロア勤務者を保護するためと説明されている。DICJは立法会での審議の場で、教育・福祉機関と連携するなどして地域コミュニティにおけるギャンブル依存の予防と治療対策に取り組むマカオ政府社会工作局(IAS)が2011年に立ち上げた「ギャンブル依存中央登録システム」の登録者のうち、無職に続いてカジノディーラーとカジノサービススタッフが多いことを挙げた。このような統計が出るのは、カジノが大きな産業であり従事者が多いことも一因だが、カジノフロアで勤務していると大きなカネが動く瞬間を目の当たりにすることも多く、豪華絢爛な非日常空間にいる時間が長いことも相まって、金銭感覚が麻痺しがちだと言われる。また、ゲームのルールを熟知したディーラーは、自分なら勝てると錯覚することもあるという。
実際、マカオでは、カジノディーラーがギャンブルで借金を抱えた結果、犯罪に手を染める事案は皆無とは言えない。
手口としては、カジノテーブルでの勤務中にチップを制服の隙間などに隠して着服、共犯者を相手に負けた時でもチップを払い出す、もしくは両替を装ってチップを盛るといったものがある。記憶に新しいものとしては2018年1月に、VIPルームのテーブルで勤務中、同じ部屋にいたディーラーに突然「伏せろ」と命じ、その隙に担当テーブルにあった約6億円超のチップを奪って逃走するという大それた事件が発生した。チップは少し分厚いコイン状のもので、1枚約140万円相当という高額なものもある。キャッシャー窓口に持ち込めば、身分証の確認の必要なく簡単に現金と交換することができる。
ただし、カジノ施設には最新鋭の監視システムが導入されており、不正行為はほぼ露見し、重い刑罰が科される。そのことは、カジノ企業の従業員がなら誰もが承知のはず。つまり、それほどまでに借金などに追い込まれるケースが少なからずあるということだ。
今回の改正法には、違反して入場した従業員のケアも盛り込まれていて、違反者にギャンブル依存の形跡が確認された場合、本人の同意を得た上でDICJからIASに個人資料が伝達され、IASが介入できると規定した。これまでにはなかった潜在的ギャンブル依存者を発見し、治療に導く機会を生み出し、セーフティネットの拡大につなげがることが期待される。
近年、マカオ当局とカジノ運営企業は、カジノ従業員に対するレスポンシブル・ゲーミング啓蒙活動を通じたギャンブル依存対策に力を注いでおり、今後もより積極的な展開が見込まれる。
プロフィール
YUJIN KATSUBE
Managing Director & Editor-in-Chief, "THE MACAU SHIMBUN"
上智大学ポルトガル語学科卒。日本の出版社でレジャー誌編集担当、香港・マカオ駐在を経験。2012年に現地で独立起業し、邦字ニュース媒体「マカオ新聞」を立ち上げる。
YUJIN KATSUBE
Managing Director & Editor-in-Chief, "THE MACAU SHIMBUN"
上智大学ポルトガル語学科卒。日本の出版社でレジャー誌編集担当、香港・マカオ駐在を経験。2012年に現地で独立起業し、邦字ニュース媒体「マカオ新聞」を立ち上げる。
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