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横浜IR産業展 セガサミーHDの参入表明が注目集める

昨年8月に林文子横浜市長が統合型リゾート(IR)誘致を表明したことで、主要なIR事業者の関心は大阪・夢洲にから横浜・山下ふ頭へと移った。その横浜で初めて開催されたIR産業展は多くの注目を集めた。report by Tsuyoshi Tanaka

横浜市が昨年10月に民間事業者からのコンセプト提案募集(RFC)の概要を公表すると、受付期日の12月23日までにラスベガス・サンズ、メルコリゾーツ&エンターテインメント、ギャラクシー・エンターテインメント・グループ、ゲンティン・シンガポール、ウィン・リゾーツ、セガサミーホールディングス、他1社(社名非公開)の7事業者が提案を提出した。
1月29日・30日にパシフィコ横浜で開催された「第1回 横浜統合型リゾート産業展」には、この6事業者がブース出展とセミナー会場でのプレゼンテーションによって、日本への取組をアピールするとあって多くの来場者が訪れた。

セミナー会場のプレゼンテーションの前に自社ブースで囲み取材に応じたセガサミーホールディングスの里見治紀代表取締役社長グループCOO。
囲み取材では、パートナー3社を紹介した後、「様々な企業と組み、互いの強みを生かす。外資IRオペレーターと組む選択肢もある」と、コンソーシアムの日本側でリーダーシップを担うという形態も視野に入れていることに言及した。


初日の午前中に行われた特別講演は横浜市の平原敏英副市長は、日本のGDPが10年にわたり横ばいにあり、人口は減少に転じ、世界における日本の地位が相対的に低下しているとしたうえで、横浜市についても2019年から人口減少に転じること、宿泊者数の伸びが全国平均を下回っていること、観光来街者の87・3%が日帰りであり1人あたり観光消費額が少ないなどの課題を説明。この現状を打開するのがIR誘致による「ハーバーリゾート」の形成で、観光MICE振興により経済を活性化させながら、文化・芸術の発信・活動拠点となる、ファミリーで楽しめる賑わいあるエリアを創出すると、IR誘致の意義を説明した。
平原副市長は、市民が懸念しているギャンブル等依存症対策にも言及し、IR内カジノにおける入場管理・規制、自己申告・家族申告制度、市としての取組としての予防教育の実施、専門医療機関の選定などを説明した。


ブースを出展している6事業者のプレゼンテーションで最も多くの注目を集めたのは、唯一の日本企業、セガサミーホールディングス。会場内は満席で、壁際や後方も立ち見の聴衆で埋め尽くされた。
セガサミーホールディングスの里見治紀代表取締役社長グループCOOは、横浜市の抱える課題を踏まえ、横浜IRを「世界の観光客から選ばれる滞在型目的地」にするとし、IRに集めた観光客を横浜市内の各拠点(商業施設、エンタメ施設、美術・文化施設、観光地、宿泊施設)につなぎ、横浜市内に長く留めることを宣言。
そのためのパートナーとして、森岡毅氏率いるマーケティング企業「刀(かたな)」、世界的建築家であるノーマン・フォスター卿率いる「フォスター アンド パートナーズ」、IR内での本格料亭旅館の企画・開発において提携する「京都吉兆」を紹介した。また、韓国・仁川エリアのIR「パラダイスシティ」での日本人スタッフによる運営実績と、将来の横浜IRへの人材供給能力をアピール。
カジノができることによる負の影響への対策としては、2017年から京都大学と共同でギャンブル依存症の予防策の研究に取り組んで切ること、カジノ施設内ではテーブルゲームのデジタル管理・監視化により不正を排除すること、同社がすでにネバダ州で厳格な審査をパスして製造業者ライセンスを得ていることなどを説明した。
同社のプレゼンテーションについてマカオ大学のジョージ・ゴディーニョ教授(ゲーミング法)に感想を尋ねると、「どのオペレーターのプレゼンテーションも素晴らしく、甲乙をつけることはできない」と前置きしたうえで、「セガサミー社のプレゼンテーションは、豊富なIR運営実績をアピールした他社とは異なるアプローチという意味で個性的で、需要予測の取組や依存予防研究などサイエンティフィックな印象を受けた」と述べた。
IR産業展にはIR事業者の他、入退出管理、セキュリティー機器、映像機器など39社がブースを出展。来場者は2日間で延べ9,631人だった。

セガサミーホールディングスのブースでは英の建築事務所フォスター・アンド・パートナーズが横浜向けに提案しているデザインの模型を展示
メルコリゾーツのブースはマカオの旗艦ホテル「モーフィアス」をモチーフにした
ギャラクシーエンターテインメントグループのブースは日本の3事業者とコラボし和のテイストを演出していた
ラスベガス・サンズは広めのステージを作りダンスやマジックなどエンタテインメント性を来場者にアピール


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