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和歌山IR CNVは1月末までに資金調達計画を示せるか?

和歌山県は現在、和歌山市の「和歌山マリーナシティ」に導入を目指している統合型リゾート(IR)について、設置運営事業者に選定したクレアベストニームベンチャーズ(CNV)と共同して、国土交通省に提出する「区域整備計画案」を策定中。しかし、この計画案をめぐり、県議会内の合意形成に遅れが生じている。
これに加えて、IR誘致の是非を問う住民投票の実施を求める市民団体が、投票条例の制定を求める署名2万筆以上を集めた。これは法定必要数の3倍を上回る。市民団体は12月9日に市選挙管理委員会に提出、年明けに条例の制定を市長に請求する考え。これは横浜市の動きとよく似ており、横浜市で投票条例が議会で否決されたのと同じように、和歌山市でも否決される可能性が高いと見られている。

国土交通省への区域整備計画案の提出期限は2022年4月28日であり、提出前に県議会の承認を経なければならないため、合意形成の遅れは深刻な事態を生む可能性がある。
そもそも県はIR導入について、11月25日から県内14会場での県民への公聴会(説明会)をスタートし、この計画案の概要などを説明し質疑も受けるとしていた。また、同日に計画案を公表し、県民から意見を募集するパブリックコメントを実施する予定だった。
しかし、11月19日に開催された県IR対策特別委員会で素案が説明された際に、事業主体となる特別目的会社(SPC)の構成や資金調達計画について明確に示されなかったことなどを理由に、出席した議員から公聴会とパブリックコメントの実施を延期すべきとの声が上がった。これを受け委員会は、公聴会とパブリックコメント延期を決議した。

12月の県議会定例会でもIR誘致についての厳しい意見や質問が挙がった。
奥村規子議員(共産)はCNVについて、「(RFPの)応募段階と、(優先権者に選定され)基本協定を結んだあとの8月25日では、社名は同じでも中身が別の会社になっているのではないか」と株主構成が大きく変わり、実権がニームパートナーズのプラシャント・グプタ(Prashant Gupta)氏からパシフィックリゾーツのエディー・ウー(Eddie Woo)氏に移ったと指摘(※1)。選定委員会による審査のやり直しと、パシフィックリゾーツ社に対する県による適格性予備調査を求めた。
田嶋久嗣理事は、株主の追加変更や増資などは「県が定める手続きにのっとり事前に相談の上行われたもの」と審査のやり直しは必要ないとした。
中本浩精議員(自民)はIR誘致を支援してきた立場から、「来年1月末までには事業実施体制や資金調達先を確実に固めた上で、区域整備計画案を完成させ、県民への説明を行い理解を深める努力をしていただきたい」と要望。
2月下旬の議会への計画案提案に間に合わせるため、県は公聴会とパブリックコメントを1月中に実施したい考えだが、IR委員会でも議会でも「事業実施体制や資金調達先を明示してから」の公聴会を要求されている。
区域整備計画の認定申請の期限は4月28日。これを申請するには県議会の承認が必要なため、県とCNVは急ピッチでこの課題をクリアしなければならない状況だ。

※1:11月19日の特別委員会での会社側の説明では、クレアベストニームベンチャーズの株式の100%をパシフィックリゾーツが保有している。パシフィックリゾーツの株主は4社で、クレアベストグループが0.25%、クレアベストワカヤマが12.25%、ニームゲーミングが12.5%、エディー・ウーが75%の株を保有。このパシフィックリゾーツの代表はエディー・ウー氏であり、クレアベストニームベンチャーズの代表もエディー・ウー氏であることから、「会社の売買があったのではないか」と奥村規子議員は疑問を呈した。

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