スキップしてメイン コンテンツに移動

サンシティ 和歌山県にIR計画を提案

日本のIR入札に参加の意向を示しているのは、いわゆるIR運営事業者だけではない。カジノホテル事業者、不動産事業者、投資ファンド、そしてサンシティグループのようなVIP事業者だ。by Tsuyoshi Tanaka

10月24日から大阪で開催された「IRゲーミングEXPO」に参加したサンシティグループ(太陽城集団)は、日本では馴染みが薄いかもしれいが、マカオをはじめとしたアジアの諸地域でゲーミングビジネスを展開している数十億ドル規模の企業で、香港証券取引所に上場している。事業領域は、観光、映画制作、コンサートとイベントの企画、飲食店、高級品、オークション、リゾート管理とコンサルティング、金融、不動産開発、スポーツ開発および教育と多岐にわたり、ロシアのウラジオストック郊外にある大型カジノリゾート「ティグレ・デ・クリスタル」(Tigre de Cristal Resort & Casino、2015年開業)を所有する香港上場のサミット・アセント・ホールディングスの筆頭株主でもある。
サンシティグループの事業の中核は、マカオで「ジャンケット」と呼ばれるカジノへの送客とVIPルーム運営事業だ。ゲーミングビジネスとVIPの嗜好を熟知するアテンドサービスのプロフェッショナルで、現在、ベトナムのホイアンとダナン近くのホイアナに同社初のIR開発を進めている。敷地面積10平方キロメートルに造られるIRは2020年オープン予定。また、沖縄でも10万平方キロメートルの土地を取得し、ヴィラとプールを備えた高級ホテルを建設する計画を進めている。

サンシティグループのアルヴィン・チャウCEO

同社がいま注力しているのが和歌山県でのIR開発提案だ。IRゲーミングEXPOのために来日した創業者でCEOのアルヴィン・チャウ(Alvin Chau)氏は、「和歌山県をエンターテインメント伝統文化の集積地と再生する」という「統合型リゾートIR2.0」のコンセプトを説明するとともに、同社が持つ舞台芸術、映画製作やスポーツイベントのノウハウが活かせるとアピールした。また、同社のプレミアム会員顧客15万人にハイクラスなオーダーメイド旅行を提供してきた実績と旅行商品を販売する独自のプラットフォームによる誘客力も強みだという。
チャウCEOは、和歌山IRの開発にあたり、世界で多数のIR建築をデザインしてきた国際的なデザイン事務所Aedasと提携することも発表。Aedasはマカオの「ベネチアン・マカオ」「サンズ・コタイ・セントラル」、シンガポールの「マリーナベイ・サンズ」などを手掛けた。

サンシティグループが公表た和歌山IRのイメージパース

[関連記事]
横浜市 山下ふ頭IRのコンセプト募集開始〔2019-10-21〕
長崎県 佐世保IRの事業コンセプト募集〔2019-10-04〕
福岡青年会議所 IR誘致を市に提言する方針〔2019-10-02〕
ラッシュ・ストリート 北海道IR開発の建築チーム発表〔2019-10-01〕
千葉市 IRに関する情報提供の分析支援業務の入札結果は「中止」〔2019-10-01〕
IR誘致意向は4自治体。川崎市は「検討中」〔2019-09-23〕
千葉市拠点の10社 IR誘致の会社設立 〔2019-09-20〕
大阪・夢洲IR RFCにMGM、ギャラクシー、ゲンティンが提案提出
メルコ 夢洲IR「事業構想公募」への参加中止 〔2019-09-18〕
千葉市 IRに関する情報提供の分析支援業務の入札募集開始〔2019-09-05〕
宮城県 IR誘致は未定 2020年3月の調査結果で判断〔2019-08-21〕
千葉市 IR(統合型リゾート)に関する情報提供依頼〔2019-08-17〕
和歌山県 IRシンポジウム開催 - 県民に和歌山IR構想を説明〔2019-08-26〕
佐世保 IR誘致に向け地域企業向けセミナー開催〔2019-08-27〕
横浜市 IR誘致を正式表明 ~カジノ事業者の関心は大阪から横浜へ〔2019-08-23〕
横浜市 IR誘致 今週にも表明か 2億6000万円の補正予算案を提出する方針〔2019-08-19〕
大阪府・市 夢洲IRの2024年開業目指しIR事業コンセプト募集〔2019-04-25〕

コメント

このブログの人気の投稿

オンラインカジノ 日本から100万人超が参加か?

海外のオンラインカジノ事業者が日本市場へのプロモーションを強化している。同じギャンブル系レジャーであるパチンコ・パチスロ遊技者とオンカジの親和性は高いはずだ。 オンラインポーカーに関する情報を発信するメディア「PORKERFUSE」に9月、「Online Gambling Booming in Japan(日本におけるオンライン賭博の流行)」と題する記事が掲載された。 オンラインゲーミング事業者が日本市場に期待していることは間違いないが、現在、導入が進められようとしている統合型リゾート(IR)に関する法律では、カジノはランドベースカジノを前提としている。そもそもカジノは、観光振興政策のためのIRに付随するものなので、国内におけるオンラインカジノ事業の合法化は、この文脈の中ではまったく想定されていない。筆者は昨年1月に、内閣官房でIR推進を担当していた方から直接、「オンラインゲーミングの解禁が議題に上がったことはない」と聞いている。 先の記事は、「日本にはギャンブリングレジャーの種目が少ないというわけではないし、 パチンコ という非常に人気のある娯楽がある」としながらも、これらには物理的な制約があるため、「日本のプレイヤーはますますインターネットに目を向け、海外のオンラインカジノが日本人向けにゲームを提供している」としている。 この記事が指摘しているように、明らかに日本人に向けて、日本語でさまざまな特典を提示してオンラインカジノ・ゲームに誘導しているサイトがいくつもあることから、すでに多くの日本人が参加していると考えるのは不自然なことではない。しかも、そういったサイトの広告を見かける頻度は今年に入り非常に増えたと感じることからも、営業活動を強化していることがうかがわれる。 いったいどれほどの市場がすでに形成されているのかは見当もつかないが、もっとも親和性が高い属性と考えられる パチンコ・パチスロプレイヤー(以下、遊技者) を対象に本誌が8月に実施したアンケート調査の中で、オンラインギャンブル(ライブストリーミング、iGaming、スポーツベットを含む)で遊んだ経験の有無などを尋ねた。   パチンコ・パチスロ遊技者では若年層、高頻度層でオンカジ参加率が高い その結果、調査対象である首都圏在住の20代~70代(各年代のサンプル数は均等に割り付け)の遊技者の27....

メルコリゾーツ 2025年にスリランカでカジノ施設開業目指す

マカオで「シティ・オブ・ドリームズ」などのカジノを含む統合型リゾート(IR)を運営するMelco Resorts & Entertainment(以下、メルコ)は4月30日、スリランカのJohn Keells Holdings(以下、ジョン・キールズ)とのパートナーショップを発表した。ジョン・キールズはコロンボ証券市場に上場するスリランカ最大規模の複合企業グループで、メルコはジョン・キールズがコロンボ中心部で進めている10億米ドル(約1545億円)規模のIR開発プロジェクト「Cinnamon Life Integrated Resort」(2019年に部分開業)に参画する。メルコとのパートナーシップにより同IRのブランド名は「City of Dreams Sri Lanka」に変更され、客室数800室以上のホテル、リテール、飲食店、MICE、そしてカジノを含むリゾートになる。 メルコが全額出資した子会社は、すでにスリランカ政府から20年間のカジノライセンス付与されている。メルコは「City of Dreams Sri Lanka」のカジノフロアと、ホテルの最上階の113室を運営する。同社の発表によると、カジノへの初期投資額は約1億2500万米ドル(約193億円)。 ノンゲーミング施設の完成は最終段階にあり、2024年第3四半期(7月-9月)の完成予定。カジノ施設の開業は2025年の半ばを見込んでいる。 メルコの会長兼最高経営責任者であるローレンス・ホー氏は、「私たちはスリランカには計り知れない可能性があると信じており、この機会は私たちの既存の不動産ポートフォリオを補完するものです。City of Dreams Sri Lankaはスリランカの観光需要を刺激し、経済成長を促進する触媒として機能することが期待されています。 私たちはこの事業を確実に成功させるために、パートナー企業およびスリランカ政府と緊密に協力し続け、地元社会と経済に大きくプラスの影響を与えることを期待しています。」とコメントしている。 スリランカ最大の都市コロンボには、政府ライセンスのもとに営業している地元資本のカジノが4軒が営業している。このうち3軒の客層は明らかに外国人(主としてインド市場)が大多数を占め、「City of Dreams Sri Lanka」の開...

タイの「カジノを含む大型複合娯楽施設」はあっというまに開業するだろう。

多額のお金を消費してくれる外国人客の誘致により経済を活性化させるため、また、違法ギャンブルビジネスへの消費の流出を防ぐために、タイ王国は、カジノを含む大規模な複合娯楽施設(Entertainment Complexesと呼ばれている)を開設する法律的な準備(=カジノ合法化)を進めている。3月28日の下院では出席議員257人中253人が賛成票を投じ、この結果が内閣に送られた。そもそもタイ国王(ラーマ10世)が非常に前向きらしいので、カジノ合法化はほぼ確実とみられている。 日本のカジノ合法化議論の起点をどこと捉えるかは、いろんな見方があるだろうけど、個人的には、石原都知事の「お台場カジノ構想」発表(2002年)によって火が付いたと思っている。だとすると、IR推進法成立(2016年)まで14年もかかったことになる。IR実施法成立(2018年)から国内IR第1号の夢洲IRの開業予定時期(2030年)まで12年もかかる見込み。 こういった日本の状況を振り返り、「タイに実際にカジノを含む複合娯楽施設が開業するのはずっと先のことでしょ?」と思う人もいるかもしれない。しかし、日本の進みの遅さが異常なのであって、タイのカジノは、あっという間にできるだろう。3~4年もかからない。なんせ、タイのセター政権は、法律が成立したら「2年以内にオープンさせる」という目標を掲げているのだから。 そしてタイ労働省は、この複合施設(複数)開設による雇用創出を「少なくとも5万人」と見込んでいる。日本で構想されているIRよりも小型の施設が想定されているため、この雇用者数見込みから逆算すると合計施設数は6~8施設を念頭に置いているのだろう。 立地として目されているのは、国際空港から半径100km圏あるいは特定の観光地域、国境(入国検問所)の近く。地元メディアが例として挙げた地名は、南部ならPhuket(プーケット), Phangnga(パンガー), Krabi(クラビ), 北部ならChiang Mai(チェンマイ), Chiang Rai(チェンライ), Phayao(パヤオ)。 text Tsuyoshi Tanaka

ゲーミング・スタンダード協会 通信プロトコルに関するセミナー開催

アメリカに本拠を置く非営利法人インターナショナル・ゲーミング・スタンダーズ・アソシエーション( International Gaming Standards Association 、以下IGSA)は6月2日(太平洋標準時刻)、ゲーム管理システム(Game to System,以下G2S)についての ウェビナー (オンライン・カンファレンス)を開催。「G2Sシステムはどのようにゲーミング産業に価値をもたらしているか?」というテーマに沿い、ゲストスピーカーそれぞれの立場からG2Sのメリットを語った。 G2Sとは、EGM(電子ゲーム機)と自社システムの間で情報を交換するための、IGSA標準の通信プロトコル。ソフトウェアのダウンロード、リモート構成、リモートソフトウェア検証、ネイティブの組み込みプレーヤーユーザーインターフェイス(PUI)など、多くの高度な機能を可能にする。 ゲストスピーカーにゲーミング業界のスペシャリストとして、Paul Burns氏(Atlantic Lotteriesの戦略&マーケティング担当シニアマネジャー)、Erik Karmark氏(Western Canada Lottery CorporationのGaming and Operations担当バイスプレジデント)、Greg Bennett氏(Alberta Gaming Liquor & Cannabisの技術製品&コンプライアンス担当シニアマネジャー)を招へい。IGSAのMark Pace氏(ヨーロッパ担当マネージング・ディレクター)がモデレーターを務めた。   VLT(ビデオ・ロッテリー・ターミナル)とスロットマシンのシステムと機器の統合に携わってきた立場から、Greg Bennett氏は、「G2Sプロトコルはカジノ管理委員会に於いて認証許可を受けており、これを使用することで得られた最大のメリットはゲーム機器に情報をダウンロードできること」だと述べた。 「ゲームのダウンロード、OSのダウンロード、請求書アクセプターのダウンロード、カードリーダー、さらにはプリンター等々。非常に広い管轄地区内のすべての場所に、技術者が物理的に出かけてソフトウェアをアップグレードするとしたら数カ月はかかるであろう作業が、数時間でできる。これによりソフトウェアの更新をより...

長崎・佐世保IR 事業者公募開始

長崎県は1月7日に「九州・長崎特定複合観光施設区域整備実施方針」(以下、実施方針)を策定・公表するとともに、同日、募集要項説明会をYouTubeで開催。22日には募集事項等に関する質問書に対する回答を公表した。 実施方針は、IR設置運営事業予定者の選定に当たって、IR整備法第5条に基づき国土交 通大臣が定める「IR区域の整備のための基本的な方針」(いわゆる基本方針)に則して、IR施設に係る特定複合観光施設区域の整備の実施に関する方針を定めたもの。募集要項や選定に関する手続き、県が要求するIR施設を構成する施設の種類や機能および規模、懸念事項対策などが記されている。 資格審査書類の受付期限は1月28日。第一次審査書類の結果公表後、通過事業者には競争的対話および廉潔性調査を実施し、第二次書類審査、プレゼンテーションと段階的に進められる。ただし参加資格審査通過者が3応募者以下の場合には、一次審査は実施せず、二次審査に進む。 県が想定しているスケジュールでは、今年夏から秋頃にIR事業者を選定し基本協を締結する。冬頃までに県とIR事業者で区域整備計画を作成し、佐世保市の同意、長崎県議会の決議を経て、2022年春頃に区域整備計画を国に申請する。国の申請受付期間は今年10月1日から2022年4月28日まで。 県の計画が国に認定された場合、2020年代後半にIRの開業を見込んでいる。 IR予定区域は、現在ハウステンボス社が所有する約31ヘクタール。この区域に加え、公共ハーバー・マリーナを含む提案可能港湾区域が示されており、早岐港一体提案も可能。