スキップしてメイン コンテンツに移動

日本版統合型リゾート(IR)誘致は3箇所で進行中 ~これまでの流れの要点整理 2021

8月22日に行われた横浜市長選挙で、IR誘致撤回を掲げて立候補した山中竹春氏が勝利し、9月上旬に予定されていたIR設置運営事業者の選定が中止されたことは記憶に新しい。横浜市は5月17日を参加資格審査書類の提出期限にして、「特定複合観光施設設置運営事業」の設置運営事業者公募(RFP)を実施していた。このRFPに参加したゲンティン・シンガポール・リミテッドを代表企業とするコンソーシアムには、綜合警備保障、鹿島建設、竹中工務店、大林組とともにセガサミーホールディングスが名を連ねていたので、遊技業界関係者も注目していたはずだ。
 横浜市のIR構想は消えたが日本のIR構想が消えたわけではなく、国土交通省は10月1日から区域認定申請の受付を開始した。
 IR整備のこれまでの流れと、主要自治体の状況を整理する。

▼IR推進法と実施法の成立
 「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(通称:IR推進法案)は2013年12月に国会に提出され翌年6月に衆議院内閣委員会で審議入りしたものの、秋の衆議院解散によって廃案になった。IR議連がこれを国会に再提出したのは2015年4月28日。審議はなかなか進まず、成立したのは2016年12月。IR推進法はあくまでもIRについての基本的な考え方を示した上で、「政府はIR推進法の成立から1年後をめどに、IR整備に必要な法制上の措置を講じなければならない」旨を規定した法律。
 IR推進法の成立を受けて内閣の特定複合観光施設区域整備推進本部(IR推進本部)によって策定された「特定複合観光施設区域整備法案」(通称:IR整備法案、IR実施法案)は、2018年4月27日に閣議決定し国会に提出されて、同年7月20日に成立した。IR整備法で定められた認定区域整備計画の数の上限は3カ所。認定申請に当たっては、都道府県はその議会の議決及び立地市町村の同意、政令市はその議会の議決が要件とされた。

 IR区域整備の意義や目標、区域認定に関する基本的な事項等を規定した「基本方針案」が策定・公表されたのは2019年4月。IR区域認定を申請する都道府県等は、「基本方針」に示された認定基準に従って、IR事業者の募集・選定手続等を定めた「実施指針」を作成し、公募によりIR事業者を選定するという流れになる。
 「基本方針」が成立したのは2020年12月だが、IR導入を目指す自治体はこれより先にRFC(事業コンセプト案募集)を実施し事業者公募の前哨戦をスタートした。

▼誘致を見送った有力候補地
 地域内で議論が活発化しながらも誘致表明を見送った自治体もあった。
 北海道は日本へのIR導入議論が本格化した初期から、苫小牧市、釧路市、留寿都村などが誘致を表明しながらも、高橋はるみ道知事(~2019)は明言を避けてきた。2019年に任期満了に伴う知事選で当選した鈴木直道知事は同年11月に、道として誘致を見送ると表明した。
 幕張新都心でのIR導入を検討してきた千葉市は、熊谷俊人市長(当時。現在は千葉県知事)のもとで2019年10月にRFI(情報提供依頼)を実施した。しかし熊谷市長は翌年1月7日に誘致見送りを表明。自民党の秋元司衆院議員(当時)がIR参入を目指す中国企業から現金を不正に受け取った疑惑が強まり、世論の注目が高まっていたタイミングだったが、その影響については「事件が起きる前に、ある程度、方向性を決めていた。今回の判断とは関係ない」と否定した。
 東京都は2014年度以降2019年度まで毎年、IRに関する調査分析業務を外部機関に委託しその報告書を公表している。しかし小池百合子都知事は「是非の検討をしている」と言うにとどまり、誘致を表明しなかった。

▼誘致を進めている和歌山、大阪、長崎
 結果的にRFP(事業者公募)を実施したのは、横浜市、和歌山県、大阪府市、長崎県の4自治体。先述の通り横浜市はすでにこれを中止している。
 和歌山県は7月にクレアベストニームベンチャーズおよびClairvest Group Inc.のコンソーシアムを事業者に選定。長崎県は8月にカジノオーストリアインターナショナルジャパンを選定。大阪府と大阪市は9月にMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスのコンソーシアムを選定。
 これら自治体は、選定した事業者と共に計画を作成し、国土交通省に区域認定の申請を行う。その受付期間は、COVID-19パンデミックの影響などから当初の2021年1月4日~2021年7月31日から9カ月延期され、2021年10月1日~2022年4月28日まで。
 設置可能なIR施設の上限数は、最初の区域整備計画の認定日から起算して「7年を経過した場合」に再検討することになっている。しかし仮に現在申請受付期間が始まっている区域認定申請において、認定される整備計画が上限である3カ所に満たなかった場合、"埋まらなかった枠" については7年を待たずに再度の申請受付が行われると考えられる。

 

   *   *   *

[関連記事]
サンシティが和歌山IRから撤退を公式表明 2021-05-13
和歌山県 IR事業者公募 クレアベストを優先権者候補に決定  2021-06-02
和歌山IRプロジェクトにシーザーズが参加 2021-10-06
長崎・佐世保IR 3事業者がRFP二次審査書類提出 2021-06-30
長崎・佐世保IR カジノオーストリアを優先権者に選定  2021-10-08
大阪・夢洲IR 実施方針修正 全面開業時期は実質白紙に 2021-02-16
大阪夢洲IR 応募事業者はMGMのみ 2020-02-19
大阪府市 夢洲IR 追加募集に応募事業者なし 2021-04-09


コメント

このブログの人気の投稿

マルハン 2019年度連結業績は減収減益

マルハンの2020年3月期通期(2019年4月1日~2020年3月31日)の連結業績は前年同期比2.6%減の1兆5094億5400万円、営業利益は同4.5%減の320億9000万円の減収減益。経常利益も同11.3%減り344億1700万円だった。6月5日に同社WEBサイト上で公表された。 売上高営業利益率は2.1%、売上高経常利益率は2.3%。総資産は6229億6900万円で、総資産経常利益率は5.8%。自己資本比率は48.5%、流動比率は165.5%。 The biggest company with sales in the Pachinko industry Maruhan's net sales* fell by 2.6% year-on-year to 1,509 billion yen (US$14b) in fiscal 2019. Operating profit decreased by 4.5% to 32 billion yen (US$300m) , ordinary income decreased by 11.3% to 34.4 billion yen (US$322m) . Maruhan's return on total assets ratio is 5.8%, capital-to-asset ratio is 48.5%. note) In the pachinko business, 'sales' or 'revenue' means pachinko/pachislot players' gross pay-ins, gross betting-amounts. It's not the same meaning of  'revenue' in the casino industry.   [関連記事] ダイナム 2020年3月期連結 3期連続増益 〔May 28, 2020〕 マルハン 中間決算は減収増益 〔December 10, 2019〕

The U.S. Gaming Market: A Tale of Two Recoveries 米カジノ市場 2つの市場での回復に違い

アメリカのカジノ産業のCOVID-19パンデミックの影響は均質ではなく、一部の市場では前年の水準を上回っている。2つの市場の差異、そして今後の回復の見込み、iGaming(オンラインギャンブル)の展望などをGlobal Market Advisors パートナーのブレンダン・バスマン氏が解説。※日本語記事は英語記事の下 by BRENDAN D. BUSSMANN Brendan D. Bussmann is a Partner and Director of Government Affairs with Global Market Advisors (GMA).  GMA is the leading provider of consulting services to the gaming, entertainment, sports, and hospitality industries.   Every aspect of the gaming industry around the globe has been impacted by SARS-CoV-2.  In the United States, this has been felt very directly as every casino at one point was closed during the Great Shutdown of 2020.  Some properties began to reemerge in May and openings have continued up until today, but a percentage have still remained shuttered as demand in some parts of the United States have not met the levels needed to reopen.  Some amenities at these properties have also struggled to reopen with occupancy limits placed on food & beverage outlets and hot...

大阪・夢洲IR RFCにMGM、ギャラクシー、ゲンティンが提案提出

人工島・夢洲での統合型リゾート(IR)開発の準備を進めるために大阪府・市が事業者に具体的な事業コンセプトの提案を募集した結果、MGMリゾーツ・インターナショナル(アメリカ)、ギャラクシー・エンターテインメント(香港)、ゲンティン・シンガポール(シンガポール)の3事業者がコンセプトを提出したと日本経済新聞が報じた。 事業コンセプト募集(Request for Concept、RFC)の名称は「(仮称)大阪・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業」で、4月24日に要項が公表され、5月24日までの受付期間内に、MGMリゾーツ・インターナショナル/オリックス株式会社、ゲンティン・シンガポール・リミテッド、ウィン・リゾーツ・リミテッド、メルコリゾーツ&エンターテインメント リミテッド、ラスベガス・サンズ・コーポレーションの他2社(名称非公表)の7社が参加登録していた。 横浜市が8月22日にIR誘致を発表した後、ラスベガス・サンズ、メルコリゾーツ&エンターテインメントの2社が大阪からの撤退を表明していた。 このRFCへの参加は、今後の大阪府市による「実施方針」策定後に実施される民間事業者の公募・選定(Request for Proposal、RFP)参加の条件ではないが、実質的にはRFP参加事業者は上記3社に絞られたと見られている。 [参照] 大阪府 「(仮称)大阪・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業」のコンセプト募集について [関連] メルコ 夢洲IR「事業構想公募」への参加中止 〔2019-09-18〕 千葉市 IRに関する情報提供の分析支援業務の入札募集開始〔2019-09-05〕 宮城県 IR誘致は未定 2020年3月の調査結果で判断〔2019-08-21〕 千葉市 IR(統合型リゾート)に関する情報提供依頼〔2019-08-17〕 和歌山県 IRシンポジウム開催 - 県民に和歌山IR構想を説明〔2019-08-26〕 佐世保 IR誘致に向け地域企業向けセミナー開催〔2019-08-27〕 横浜市 IR誘致を正式表明 ~カジノ事業者の関心は大阪から横浜へ〔2019-08-23〕 横浜市 IR誘致 今週にも表明か 2億6000万円の補正予算案を提出する方針〔2019-08-19〕 大阪府・市 夢洲IRの2024年開業目指しIR事業コン...

The number of pachinko halls was 9,639 as of the end of December 2019.

The number of pachinko halls was 9,639 as of the end of December 2019, decreased by 421 halls compared to the same month of the previous year. The number of pachinko/pachislot/others machines decreased by 106,801 year-on-year to 4,195,930 as of the end of December 2019. The number of pachinko machines decreased by 3.0 percent, pachislot machines decreased by 1.6 percent.

マカオ政府 SJMとMGMの要望を承認

マカオ特別行政府は3月15日、カジノ施設運営事業者のSJMとMGMから提出されていた「カジノ運営のコンセッション契約、サブコンセッション契約期限の、2022年6月26日までの延長」を認める決定を発表した。この件は最高執行命令により公式化され、同日に公式議事録に掲載された。 マカオのカジノ産業では、政府から営業権(コンセッション)を付与されたカジノ施設事業者が3つ、サブコンセッションを付与された事業者が3つある。SJMは2002年に18年間のコンセッションを与えられ、2005年にそのサブコンセッションを得たMGMの期限もSJMと同じ2020年までだった。STDM社によるカジノ事業の1社独占体制に終止符を打ち、入札により新たなカジノ事業者にコンセッションが与えられて以降、この2社が初めての期限を迎える事業者となるはずだった。 2社のコンセッション期限延期が認められたことで、6社すべての期限が2022年に揃った。マカオ大学法学部のジョージ・ゴディーニョ(Jorge Godionho)客員教授はかねてより「SJMのコンセッションを延期し2022年に揃えるべき」と主張していた。 「SJMに与えられた期限は18年間、ウィンとギャラクシーに与えられた期間は20年。2年の不足は明確な理由がないばかりか、2020年の期限と2022年の期限ために2度の入札が行われることになれば、事態は非常に複雑になります。それはまったく必要性のないことです」 いずれにせよ、現在の6社の中から期限延長が認められない事業者が出るのか。新たな事業者にコンセッションが付与される可能性があるのか、IR業界関係者はマカオ政府の動向に注目している。 もしもコンセッションが延長されず、マカオでのカジノ事業を失えば、ノンゲーミングだけでIR施設を維持することは不可能だ。仮に、日本のIRに参入意向を示しているオペレーターがマカオでのカジノ収益を失えば、日本参入のための資金調達も大きな支障をきたすことになる。 もちろん、現在の6社すべてのコンセッション契約が延期される可能性もある。ただ、マカオ政府の政策は比較的明快で、「観光産業の多様化」を目標にしている。IR事業者にはノンゲーミング事業を拡充するよう追加投資計画を要求することは間違いない。 文=田中 剛(Amusement Japan 編集部) ...